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怪的創作集団『新・妖怪党』
崇道院早良は新・妖怪党員として活動しています。 只今『三吉鬼遺聞録』(仮)連載中。 ※著作権等は党或いは各々の党員のものです!!
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退廃モビィディック 〜崇道院早良の日常劇場〜
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崇道院早良

Author:崇道院早良
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2008.12.31 Wed
年内は小話が限界。
いやぁ…年内は小話が限界のようです、早良です。

もう明日は大晦日ですって、奥さん。
全然年越せないっつう話ですよ。
1日の朝から帰省するんですが、まだ荷造りしてないんですよ。
小説かいてたらいつの間にか日付変わっちゃってました^^;

ちゅうことで小話の前半をUPしておきます。
続きはまた明日。(予定)

―(無断転載禁止!!)―

『三吉鬼遺聞録』(仮)
《「新説・葛の葉荘物語」より》

番外ノ壱   スネ種騒動(前編)

― 今日の話はいささか変り種だ。いや、訂正しよう。変わった種のいささか妙な話であると。気が向いたのだからそんな話をするのも……まぁいいだろう。それでは、悪戯好きの妖怪の引き起こした小さな小さな、しかして当事者にとっては異常で重大な事件の話を始めようじゃないか。

「お客さん、お客さん。もう終点ですよ、車庫に向かっても構いませんか?」
「はっ……え?駄目駄目、降りる、降ります、今すぐに。えぇ、はい、すぐ降りますから」
彼は飛び起きると目をこすって、よだれを拭きながら料金を払ってバスを降りた。
少々幼さの残る顔の彼は高校一年生。この春、高校に進学したばかりのぴっかぴか、というわけだ。慣れない生活リズムの中で慣れない勉強やハードな部活に勤しむ「普通の」高校一年男子である。今日はつい疲れが祟って、降りる停留所もなんのその、バスで寝過ごして終点まで来てしまったようだ。
薄暗いどころではない。暗い。当然である。彼は吹奏楽部員としてたっぷり部活をこなしてから帰路についた。その上で寝過ごして終点まで来たのだから日はとっぷりと暮れている。
「ふぅ、寝過ごしちゃったよ。ここどこだろう?やけに暗いなぁ……」
彼が暗く感じるのも無理はない。いつもの停留所には電気で明るい時刻表があるし、そばには街灯がそれなりにある。しかし、ここにはそれらがない。それどころか酷く錆の浮いたベンチと同じく錆だらけの停留所であることを知らせる標識しかない。時刻表は雨や錆の影響でその役目をすでに果たしていない。
「んあ。ここに何か書いてある。えっと、ちひまつまち?あ、ちっちゃくローマ字もある。ちしぶきちょう……血飛沫町」
彼はまだ気付いていない。今自分の置かれている状況の異常さに。
「なんだこれ、物騒な地名だなあ。路線図にも載ってないぞ。……え?」
彼はまだ気付いていない。これから自分に何が起きるのかを。
「やばいなぁ、とりあえず家に電話しなきゃ。ケータイ、ケータイっと。うわ、電波ない」
途端に慌てふためきだした。人間、知らない状況や普段あまりないことが起きることには弱いものである。彼は携帯電話を持ってうろうろと電波の拾える場所は無いか探していたが、じきに諦めてベンチに腰掛けた。
「ん」
ふと何かの気配を感じて横を見ると子どもが居た。この暗闇に子どもが居るのは怖い。
「ひゃっ」
思わず飛びのく。どうやらそれは正解だったようだ。怖いながらも子どもをまじまじと見ると目が一つしかない。良く見ると服も着ていない。彼はすっかりパニックだ。
「っうわ、何、何なの。誰、何、怖ぇよ、無理無理。あ、足にも、やめて、近づかないで」
気付くと彼の周りにわらわらと裸の子ども達がたかっている。その数四十、いや五十ほど。必ずしも一つ目というわけではないらしく、目が二つや三つ、四つの者もいる。その異形の子ども達が寄ってたかって何かをぐいぐいと押し付けている。小さな粒、種のようだ。
「くわっはっはっは」
どこからか降ってわいたように笑い声が響くと子ども達の動きがぴたりと止まった。だが、彼の抵抗もぴったり止まった。いや、考えや動きが状況についていけなくなったのだ。
「ほほう、人間とは珍しい。少年よ、それがしは『二十八宿(にじゅうはっしゅく)』が一、『奎(とかきぼし)』の『セコ大将』兵吉(ひょうきち)である。そこなセコどもの長よ。自分で言うのもなんだが悪戯においては群を抜いておるぞ」
停留所の裏から子どもが現れた。他の子ども達と同じく裸である。ただ、その手には軍配が握られ、頭には立派な房や鍬形のある兜が輝いていた。兵吉は重みでたまにふら付きながらも、子ども達、セコ達に道を開けられて少年のまん前まで進み出た。
「少年よ、珍しい客人であるということで我らの無礼は大目に見ていただきたい。というのも我らはな、少年。稀なる客人に稀なる種を植え……もとい授けようと思ったのだ。これなる種を見よ。これはスネ種といって……」
残念ながら兵吉の口上はそれ以上少年の耳には入らなかった。脳をフル回転させたあげく、いとも簡単に限界を突破し、口上の途中に気を失って倒れてしまったのだから。
「これは好都合。よし、セコども。そこな客人にスネ種をたっぷりとくれてやるが良い」
きちきち、ほいほい、しょいしょい、などと様々な鳴き声がセコ達から発せられる。そして、少年の体に再び種を押し付け始めた。

早朝。ほのかに明るくなってきた停留所に不穏な影が迫る。ときどきよだれをこらえるかのように悶え、しばしば舌なめずりをしている。その体は羽で覆われている。そして黒い。
「うふふ。スネ、スネの匂いがする。どうやって食べようかなぁ」
物騒だ。その影は『KRS(カーエールエス)』が筆頭、『KARASU(からす)』である。KRSはスネコスリ捕食者集団であり、またの名を『からす組』という。
スネコスリ、という妖怪が居る。その名の通り人様の脛を擦るの妖怪で、その容姿がめっぽう可愛いとの評判ゆえ妖界では主に愛玩用として扱われることが多い。だがしかし、KRSを始めとしたスネコスリ捕食者達にとっては紛れもなく食用である。そればかり食べているわけではなさそうであるので嗜好品なのかもしれないが。彼女がスネスネ言っているのはスネコスリのことなのである。
「いた。大量だ」
彼女の視線の先には五、六匹のスネコスリが群れていた。いや、少年が倒れており、そこにスネコスリがたかっているのだ。いやいや、良く見てみると生えている。どういう理屈かわからないが少年の体からスネコスリが直接生えているのである。ちっとも可愛くはなく、むしろパッと見が可愛いだけに余計気持ち悪い。
 少年は唸りながら目を覚ました。しかし、寝起きは最悪であった。体は重いし、気分もすぐれない。幸か不幸か、少年にはそんなことをじっくり感じている余裕はなかった。すぐそこまで黒い塊がものすごい速さで迫ってきている。身の危険をひしひしと感じた少年は体が重いと感じながら逃げ出した。そして走り出してから気付く。体になにやら知らない獣がまとわりついていて、しかもそれは自分の体から生えているのだということに。
 手で引っ張ってみても取れないどころか痛みさえ感じる。それでも止まるわけにはいかない。おそらく止まれば命が危ないと本能が告げている。
「待てー、ごちそうどもがー」
案の定、後ろから恐ろしい叫び声が聞こえる。必死で逃げる少年。体に生えたスネコスリはきゅいきゅい鳴いている。
「なんでこんなことに。神様、僕が何かしましたか。うわぁぁああん」
「止まれ、止まるんだ。そこの少年、止まりなさい」
半べそでわめきながら走る少年の前に颯爽と立ちはだかる影が現れた。からすではない。手には十手と御用提灯を持っている。だが、少年は新たな影に怯え、制止を振り切って走り続けたのだった。
そうしてスネコスリの生えた少年とそれを追うからす、そして十手の男の真剣勝負の鬼ごっこがはじまったのである。

―――

それではまた〜
チェリオ♪ノシノシ

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